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生物学的製剤による治療(医薬品による革命的治療)
乾癬では2010年、アトピー性皮膚炎では2020年に生物学的製剤が使用可能になりました。それにより画期的な治療効果が得られています。当院では開発当初より積極的に治療に取り入れており、多数の患者さんが使用しており、日本皮膚科学会にも生物学的製剤導入施設として登録されております。乾癬では11種類の注射薬と1種類の内服薬、アトピー性皮膚炎では1種類の注射薬と3種類の内服薬が現在使用可能となっております。様々な治療に関わらず難治の方にも劇的な改善効果が見られております。ご興味のある方は、ぜひ受診の上、ご相談ください。
生物学的製剤とは、生物から産生されるタンパク質などの物質を応用して作られた薬である。これに対し、一般的な医薬品は、化学的に合成した物質をもとに作られる。病原体から作られ感染症の予防に用いられるワクチンや、ヒトの血液から作られる血液製剤、抗毒素製剤(ボツリヌス菌やジフテリア菌など)などが該当する。広義では、バイオテクノロジー(遺伝子組換えや細胞培養など)の技術で開発された新薬も該当する。乾癬やアトピー性皮膚炎の治療薬として、後者のバイオテクノロジー技術により多数の薬品群が開発されている。
ほくろ
俗にいう『ほくろ』には様々な疾患が含まれています。医学的に『ほくろ』を意味する病名は『色素性母斑』ですが、一般的に『ほくろ』と思われている病態は、上記以外に光線性色素斑、老人性色素斑、脂漏性角化症、疣贅、また悪性腫瘍である悪性黒色腫などが含まれます。それがゆえに、『ほくろ』を正確に診断することなしに治療することは非常に危険です。
『ほくろ』の診断は、ほとんどの場合は、診るだけでできます(視診とダーマスコピーという特殊な拡大鏡を使用する)。診断に悩む場合や、悪性を疑う場合は皮膚生検を行うこともあります。
- 手術切除(小さいものはダーマパンチという特殊な道具を使用することで数ミリ単位の切除ができ、傷跡も小さくすみます。再発を防ぎ、確実な診断ができるという意味でおすすめです。)
- レーザー切除。表在性の盛り上がっていない『ほくろ』に可能な治療ですが、再発もあり得ます。
- 液体窒素療法。やや隆起している『ほくろ』で診断に迷うことのない『ほくろ』の場合の治療選択肢のひとつになります。
急いで治療すべきか、また治療不要なのか、『ほくろ』で心配されている方は、ぜひご相談ください。
しみ(あざも含めて)
「紫外線などから皮膚を守るメラニン色素」
皮膚の一番外側にある表皮の一番下層である基底層には、色素を産生する「メラノサイト(色素細胞)」が一定の割合で含まれています。紫外線などの刺激を受けるとメラノサイト内でメラニンという色素が生成されます。それが表皮の細胞である角化細胞に受け渡されることで色素沈着が生じます。ちなみに色素細胞の数は、個人、人種間であまり差がなく、そのメラニン産生能に差があることにより皮膚の色に違いがでます。また、しみに見える色素斑が生まれつきもしくは後天性に生じる太田母斑、異所性蒙古斑や扁平母斑であることもあります。
「メラニン色素の代謝」
皮膚は、通常約28日周期で新しい細胞にいれ変わる「ターンオーバー(新陳代謝)」を繰り返します。基底層の細胞が分裂して皮膚表面に押し上げられ、最後は表面からアカとしてはがれていきます。その際にメラニンも、古い細胞とともにはがれ落ちます。メラニンの過剰産生に加えて、ターンオーバーのサイクルが遅れると、メラニンもそのまま残って色素沈着=「シミ」となってしまいます。
「紫外線と活性酸素」
メラニン過剰産生の最大の原因は紫外線です。紫外線はメラノサイトを直接刺激するだけでなく、活性酸素も産生します。活性酸素とは反応性の高い酸素で、体内では基本的には有害です。たばこやストレスなども活性酵素を増やします。活性酵素はメラノサイトを刺激します。不規則な生活や過労などもしみの原因となります。
- 色素産生を抑える内服薬(保険診療)
- 液体窒素療法(脂漏性角化症では保険診療となります)
- ハイドロキノンクリーム(様々な濃度を用意します;自由診療)
- 皮膚のターンオーバーを促進するトレチノインと美白剤であるハイドロキノン併用療法(場合によってはレーザーに匹敵する効果を示します。トレチノインはこじわにも効果あります;自由診療)
- レーザー治療(Qスイッチアレックス、Qスイッチヤグレーザー、PicoWAYレーザーやIPL:魔法のようと感じられる方もいます)、トーニング治療(レブライトトーニング、Picoトーニング:肝斑の方用)は色素産生を生じやすい方も治療可能です(自由診療)。ただし、あざに対するレーザー治療は基本的には保険診療となります。
アトピー性皮膚炎
ヒトに特有で遺伝性の先天性過敏症であるアレルギーをアトピーと称し、アトピー素因を有するヒトが発症した皮膚炎をアトピー性皮膚炎と呼ぶようになりました。遺伝形式は不明ですが、現在はアレルギーの1面と乾燥性で刺激に敏感な肌を有するという2面性がアトピー素因の特徴と考えられています。
- アレルギー;多くはダニを主成分とするほこりや花粉などの飛沫アレルゲンが大多数をしめます。また、最近は自分の汗から分泌するもの(カビや金属)が原因となっているヒトも多いです。それゆえ、汗自体がアレルゲンとなります。
- 過敏肌;乾燥、刺激、暑さ、湿気など外界の影響に対して通常以上に過剰反応するのです。
- 精神的要因;ストレスとの関係を感じる方も多いと思いますが、掻破行動が習慣(引っ掻くのが好きになっている)となっている方も実は結構います。
- その他;ヒトにより独特の原因を有することが時々あります。自分にとっての悪化因子(悪くなる状況や気候など)に気づいたことがありましたらおっしゃって下さい。
- 一刻も早く皮膚炎を沈静化したい人。
- ゆっくりでもいいかからきっちり治したい人。
- 以前は上記の方針で治療行っておりましたが、2020年に生物学的製剤が販売開始されてから、状況が変わりました。何をしても難治であった方が、驚くほど劇的に改善することが可能になりました。当院でも多数の方に導入しており、効果を示しています。注射薬や内服薬があります。保険医療ですが、治療費が高いので高額医療費の申請をおすすめします。
湿疹ができやすい体質は残りますが、湿疹は治ってしまう方はたくさんいます。
生物学的製剤が出来てから、湿疹ができやすい体質そのものの改善も可能となっています。
いぼ(尋常性疣贅)
手や足にできる角化性の丘疹や結節で、硬いので魚の目やたこと間違われることが多いです。時に顔や体にもできます。Human papilloma virus(ヒト乳頭腫ウイルス)の感染が原因で、自分でも他の場所にうつることがよくありますし、他人にうつしてしまうこともあります。
- 液体窒素療法(すごく冷たい液体で凍結します)。
- 漢方薬の内服(免疫を活性化させてウイルスに抵抗力をつけます)。
- モノクロロ酢酸の外用。足底の治りにくい『いぼ』に有効です。
- 免疫療法。全身や手足にたくさんできてしまった場合に行います。
手や足の裏の『いぼ』は難治です。なかなか治らずに困っていられる方、ぜひ一度ご相談下さい。
にきび(尋常性ざ瘡)
毛穴に、1.皮脂や、2.角質がたまり、この状態に3.細菌感染(acne菌など)が合併して炎症を起こします。上記の病状は遺伝的に毛穴がつまりやすい体質に加えて、環境要因(睡眠不足、食生活など)が影響して最終的に『にきび』という病態が形成されます。
市販での外用薬は1.と2.の対策しかできていません。また、例え抗菌作用のある塗り薬を使用しても毛穴の深くまでは届きません。『にきび』治療で病院に行くという意味は3.についての治療をしっかりできるという大きな意味があります。また、同時に1.と2.に対しても市販にはない薬剤を使用できます。最近は、抗生物質だけでは難治な方にエストロゲン(女性ホルモンの1種)産生作用のある漢方薬もためして頂き、効果が得られています。
『にきび』で悩んでいらしたら、まず受診してください。軽症でも重症でも治療開始が早い方が効果もよくでます。特に、『にきび痕』に関しては早期治療が大切です。
乾癬
紅い色をした、かさかさするやや隆起した皮疹が体中にできる病気です。膝や肘などよくこすれるところにできやすい傾向があります。平均発症年齢は、28歳、ピークは16~21と55~60歳の2峰性を示していおり、近年、増加しています。発症しやすい体質が不規則に遺伝すると考えられていますが、詳細は不明です。
- ステロイドやビタミンD軟膏などの塗り薬。
- 紫外線療法(NB-UVBまたはPUVA)(比較的よく効きますが通院をまめにする必要があります)。
- 内服薬(ビタミンA誘導体または免疫抑制剤)(よく効きますが副作用に注意しながら使用する必要があります)。
- 注射(抗TNF-抗体, 抗IL17抗体など)(非常によく効きますが感染症を有する方は使用できません。保険医療ですが治療費が高いので高額医療費の申請をおすすめします)。当院では導入から維持まで行っており、多数の方が使用されています。
完全に治ってしまう人もいます。しかし、病院との付き合いは長くなる方がほとんどです。根気よく治療しましょう。最初は、通常、月に1~2回の通院、よくなれば1回/1~2か月の頻度になります。生物学的製剤を使用すればほぼ消退させることも可能です。
巻き爪
足などの爪が丸まって肉に食い込むことで、痛みや出血、時として感染症を引き起こします。
- 軽症:爪甲の角の切除(軽症の場合、これで改善します)。
- 中等症から重症:感染や腫れの治療を行いながら、ワイヤー法を行います。外来で、可能です(10〜15分)。
痛みをあまり伴わないので、麻酔がいらず、施行直後より痛みは軽減します。また、手術やフェノール法などと比較して、爪の縮小や変形をきたしません。
汗アレルギー
自分自身の汗に対してのアレルギーです。アトピー性皮膚炎の患者さんの約5割が有すると言われています。また、コリン性蕁麻疹の患者さんも有していることがあります。汗アレルギーを発見し、対処することは長年苦しんでいた皮膚炎の治療の大きな前進となることがよくあります。
- 血液検査:血液を採取するだけで診断できます(月から金曜の午前まで)。
- 汗の皮内試験:自己の汗を採取し、希釈液を作成することで汗アレルギーの有無の検索が行えます。汗回収セットをお渡しします。
汗アレルギーの治療が必要な方には減感作治療を施行しています。
悩んでおられる方は、ぜひ一度ご相談下さい。
金属アレルギー
単に金属との接触と生じる、いわゆる『かぶれ』から金属を吸収することでおこる全身性接触皮膚炎を呈するもの、また金属を多く含む食物を摂取することで生じる全身型の金属アレルギーまで様々な形態をとります。 原因不明の湿疹でお悩みの方や、もしかしたら金属アレルギーかもと思われている方は、一度、受診してみて下さい。 当院では、貼付試験を行うことで原因金属の追求を行い、適切な除去指導を行い、必要に応じて治療をしています。
皮膚腫瘍・手術(日帰り)
皮膚には様々な腫瘍ができます。俗にいう『ほくろ』から『年寄りいぼ』は、ほとんどのヒトが持っているといっても過言ではないです。しかし、本当に『ほくろ』、『年寄りいぼ』で診断は正しいのでしょうか?皮膚科医にとって、その見極めが最も重要です。それができない医師は皮膚科医(すくなくとも専門医)とはいえないでしょう。日頃の疑問にお答えし、かつ必要であれば日帰り手術を行っております。皮膚のできもの(腫瘍)に関しては、ぜひご相談ください。
- 病歴聴取:生まれつきあるのか、後からでてきたのかは大きな違いがあります。また、急速に増大したのか、ゆっくり大きくなってきたのかなど、聴診から得られる情報は非常に大切です。まずは病歴を伺います。
- 視診:目で観察します。ほくろの場合は6mm以上の大きさは注意が必要です。
- ダーマスコピー:特殊な拡大鏡を使用して、色調や皮膚の深い部分の浸潤具合を観察します。この時点で80%以上が診断確定します。
- 皮膚生検:1~3で診断がつかない場合や、確定診断を必要とする場合に行います。病理組織検査で顕微鏡レベルの診断を行います。
- 日帰り手術:たいていの皮膚腫瘍は日帰り手術(予約)が可能です。治療と診断を兼ねて切除を行うこともあります。5mm以下の小さいものは当日の施行も可能です。
- 液体窒素療法:明らかに良性と診断される腫瘍は切らなくても治療可能です。
- 軟膏療法:腫瘍によっては塗り薬でも治療可能です。
- 無治療:治療をしなくてよい腫瘍もたくさんあります。正しい診断が重要です。
尋常性白斑
境界明瞭な完全脱色素性白斑で周囲に色素増強を示すことが多いです。形状は様々で、患部の毛髪が白毛化することも少ないくないです。自覚症状はありません。片側のみに発するものと両側に渡り、多発・反発化するものがあります。色素を産生する色素細胞に対する自己免疫と考えられています。
ステロイド、免疫抑制薬、ビタミンD3などの外用が使用されています。範囲が広い方は難治性なことが多く、紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマレーザーやPUVA療法などを当院では行っています)を行います。治療期間は長期に渡ることが多く、根気よく治療する必要があります。
掌蹠膿疱症
手掌足底に小水疱や膿疱が多発、その周囲には紅斑や落屑が生じる。小水疱や膿疱が目立たない場合もあリます。痒みや痛みを伴う場合が多いです。病巣感染(虫歯や扁桃腺炎、副鼻腔炎など)アレルギー説、金属アレルギー説、内分泌障害説(女性・更年期発症・月経前増悪)などありますが、原因見つからないことが多いです。喫煙は悪化因子です。
ステロイド外用やビタミンD3外用を行いますが、難治な方が多く、紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマレーザーやPUVA療法などを当院では行っています)は定期的に行えば高確率で治療効果を示します。最近は、生物学的製剤も保健適応になっていますが、高額な医療です。難治ですが、根気よく治療すれば完治する方も多いです。
手湿疹(主婦湿疹)
手の湿疹を意味しますが、家事により生じる場合を特に主婦湿疹と呼ぶようになりました。
合成洗剤の多用による皮脂の欠乏、それに伴う角質水分保持力の低下、また、野菜などによる化学的刺激、摩擦などの物理的刺激など多因子が複雑に絡み合って原因となっていることが推測されています。ダムの決壊のように少しの擦り傷やひび割れなどから一気に湿疹が広がることがあるので早め早めの治療が重要です。アトピー素因も大きな一因となっています。手湿疹と思っていても背景にアトピー素因を有する方が多数おられます。また、乾燥だけが原因ではなく、多汗が原因となっている手湿疹も存在します。
症状に合わせて保湿剤や時には角質除去作用を有する軟膏なども使用します。外用薬だけでなく内服薬を組み合わせることも多いです。難治な方にはエキシマレーザーなどの紫外線治療も行っています。
まずは1ヶ月きちんと治療に集中しましょう。その後も再発対策を根気よく行いましょう、健全な皮膚が戻ればある程度の刺激には耐えられるようになります。